1923(大正12)年のこの日、関東大震災が起こりました。
その大惨事を忘れないため、また台風の被害の多い時期であることから、1960(昭和35)年に国土庁(国土交通省)が制定しました。
関東大震災の惨事を教訓として防災意識を高めることを目的に、毎年各地で防災訓練などが実施されてます。
防災に関する昔話
あるばんの事です。
とんちが得意のきっちょむさんが、かわや(トイレの事)におきると、向こうの空が、まっ赤にそまっています。
「ややっ、火事かな。どのへんじゃろ? うん? あの辺りは、もしや!」
どうやら、村のしょうやさんの屋敷の辺りです。
「たっ、大変だー! すぐに、すぐに知らせに行かなくては!」
きっちょむさんは、かわやを飛び出して、はだしでかけだそうとしましたが、
「・・・いや、まてよ」
寝ていたおかみさんを起こして、まず、お湯をわかしてもらって、ていねいに、ひげをそりました。
それから、大事な時に着る「かみしも」を着て、たびをはいて、せんすを手にして、ゆうゆうと落ち着いて、しょうやさんの屋敷へ出かけました。
火事は庄屋さんのはなれでした。
まだ、誰も気がついていません。
「しょうやさん、しょうやさん。はなれが火事でございますよー」
きっちょむさんは、雨戸をしずかに叩いて、しょうやさんを呼び起こしました。
声が小さかったし、戸の叩き方もおとなしかったので、しょうやさんは、なかなか目をさましません。
「しょうやさん、しょうやさん。はなれが火事でございますよー。はやく消さないと、大変なことになりますよー」
「・・・・・・」
しばらくたってから、
「なに、火事じゃと!」
しょうやさんがやっと起きて戸を開けると、はなれはもう、ほとんどやけてしまったあとでした。
次のあさ、しょうやさんはかんかんにおこって、きっちょむさんの家にやってきました。
「おまえはゆうべ、火事だというのに、なぜ、かみしもなどつけて、ゆっくりきた。しかも、あんなおとなしい知らせかただ。はなれを、丸やけにしてしまったではないか。火事のときは、なにをさておいてもかけつけて、大きなこえや、ものおとで、知らせねばだめだ!」
きつい文句をいいました。
「へい、次からは、そうしましょう。・・・けど、しょうやさんは、いつも、『男はいざというときはおちついて、みなりもきちんとせよ』と、言っていたではありませんか」
「それも、ときとばあいじゃ! そのくらいのことをわきまえないで、どうする!」
おこったまま、かえっていきました。
せっかく火事を知らせてあげたのに、きっちょむさんは、おもしろくありません。
さて、それからいく日かたった、ばんのこと。
きっちょむさんは、よなかに、がばっとはねおきると、丸太をかついで、しょうやさんの屋敷にかけつけました。
そして、丸太を力いっぱいふりあげて、
ドンドン! ドンドン!
と、雨戸をたたいて大声でいいました。
「火事だ! 火事だ! 火事だー!」
しょうやさんは、とびおきました。
あま戸をあけると、きっちょむさんです。
「火事はどこだ! おいおい、そんなにたたくな。屋敷がこわれるではないか」
すると、きっちょむさんは、丸太をほうりだして、
「ああ、くたびれた。どうです。本当に火事があったときには、今くらいの知らせ方で、いかがでしょうか?」
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