七夕(たなばた)とは、もともと旧暦7月7日に行う星祭りで、現在は新暦の7月7日や月遅れの8月7日におこなう所があります。
わし座の牽牛(けんぎゅう)星と、こと座の織女星が旧暦の7月7日の夜(七夕)に出会う伝説は中国で生まれたものです。 一般的に織女星はベガとよばれ、牽牛星はアルタイルとよばれています。 もとの七夕物語は中国のお話しですが、しかし日本には、それよりも前に、棚機つ女(たなばたつめ)の乙棚機(おとたなばた)の信仰があり、それが牽牛と織女の伝説と習合しました。 姉妹サイトの福娘童話集には、六つの七夕物語を掲載していますが、今回は香川県に伝わる「七夕の始まり」をご紹介します。 七夕にまつわる昔話 むかしむかし、あるところに、ほうろく売りがいました。 ほうろくというのは、土でつくったフライパンみたいなものです。 ある年の七月、ほうろく売りが山道を通りかかると、娘さんたちが湖で水あびをしていました。 ふと見ると、目の前に美しい着物がおいてあります。 (ああっ、何てきれいな着物なんだろう) ほうろく売りはその着物がほしくなり、その中の一枚をすばやくカゴに入れて、何くわぬ顔で通りすぎていきました。 ところがタ方、仕事を終えたほうろく売りがそこへもどってくると、一人の美しい娘さんがシクシクとないているのです。 (ははん。さては、わしに着物をとられた娘だな) ほうろく売りは娘さんに自分の着物を着せて、家につれて帰りました。 この娘さん、見れば見るほど美人です。 ほうろく売りはこの娘さんが気に入り、自分のお嫁さんにしました。 やがて子どもが生まれて、親子三人は、なかよくくらしていました。 ある日の事です。 ほうろく売りが仕事に出かけた後、お嫁さんが子どもをねかせていて、ふと天井を見てみると、何やらあぶら紙(→防水を目的とする、物を保存するための和紙)につつんだものがあります。 (あら、何のつつみかしら?) お嫁さんがつつみを開いてみると、中にはぬすまれた着物が入っていました。 「あっ! これはわたしの着物! きっと、あの人がぬすんだにちがいない。ゆるさない!」 お嫁さんはその着物をすばやく着ると、子どもをかかえて空へのぼろうとしました。 そこへ、ほうろく売りがもどってきたのです。 一目で全てをさとったほうろく売りは、お嫁さんに手をついてあやまりました。 「ま、待ってくれ! わたしが悪かった。だから待ってくれ!」 「いいえ! わたしは天の国へもどります! あなたに着物をとられて、しかたなくお嫁さんになりましたが、わたしはもともと天女(てんにょ)です」 「すまない! あやまる! いままでに何度も返そうと思ったが、お前がどこかへ行ってしまうのではないかと心配で、返すに返せなかったんだ」 「いいわけは聞きません。さようなら」 「たのむ! なんでもする。どんなつぐないでもする。だから、わたしをおいていかないでくれ!」 必死にあやまる男の姿に、心をうたれたお嫁さんは、 「・・・では、もし本当にわたしが大切なら、本当にわたしに会いたいのなら、わらじを千足つくって、天にのぼってきなさい。そうすれば親子三人、今までどおり暮らす事ができるでしょう」 と、言うと、お嫁さんは子どもとともに、天高くのぼっていってしまいました。 ほうろく売りはお嫁さんに会いたくて、さっそくわらじをつくりはじめました。 毎日、朝から晩までごはんも食べずに、わらじをつくりました。 何日もかかって、やっと、九百九十九足のわらじができました。 (よし、あと一足だ。あと一足で、あいつと子どもに会えるんだ) そう思うと、ほうろく売りはがまんできなくなり、一足たりないまま外へとびだし、天に向かって、 「おうい、はやくむかえにきてくれー!」 と、さけびました。 すると、天から雲がおりてきました。 ほうろく売りはその雲にのり、上へ上へとのぼっていきました。 ところがわらじが一足たりないため、あと少しの所で天の国へ着くというのに、それっきり雲が動かなくなりました。 「あっ、あなた、本当にきてくれたのね」 天女は、いっしょうけんめい手をふっているほうろく売りを見つけると、はたおりの棒を下へのばしました。 ほうろく売りはその棒につかまり、何とか雲の上に出ることが出来ました。 天女の家にはおじいさんとおばあさんがいて、赤ちゃんのおもりをしています。 「この人が、この子のお父さんです」 天女はほうろく売りを、二人の前につれていきました。 でも、二人はこわい顔でほうろく売りをにらみました。 何とかして、ほうろく売りを追いかえそうと考えていたのです。 そこでほうろく売りにザルをわたして、それで水をくんでくるように言いました。 穴のたくさん開いたザルでは、水をくんでくることができません。 ほうろく売りがこまっていると、お嫁さんはザルにあぶら紙をしいてくれました。 ほうろく売りはそれに水をくんで、二人のところへ持っていきました。 「うむ、人間にしてはなかなかちえがある。ほうびに、このウリをやろう。よこに切って食べろ」 そう言って、おじいさんはほうろく売りに大きなウリをくれました。 天の国では、ウリをたてに切って食べます。 もし横に切ったら、水がどんどん出て、止まらなくなるのです。 そんな事とは知らないほうろく売りが、ウリを横に切ったからたいへんです。 切り口から水がふきだして止まらなくなり、ほうろく売りは天の川に流されて、だんだん遠くなっていきます。 それを見て、お嫁さんがさけびました。 「あなたーっ、父母を説得して、月に一度、水の流れを止めてもらいます。毎月の七日に会いに来てください」 ところがほうろく売りは、水の流れの音のために聞きちがえて、 「よし、わかった。毎年の七月七日だな」 と、言って、そのまま流されていきました。 だから二人は、年に一回、七月七日にしか会えなくなったという事です。 おしまい 姉妹サイトの福娘童話集では、六つの七夕物語を掲載しています。 他の記念日 川の日 竹・たけのこの日 乾麺デー ラブ・スターズ・デー サマーラバーズデー サマーバレンタインデー 京都 賃貸よりオススメでした。
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