イギリス・スコットランドのネス湖に巨大な怪獣が棲むという記事が写真とともに新聞に掲載されました。 それが、1933(昭和8)年のこの日です。 この怪獣はネス湖にちなんでネッシーと名付けられました。 今まで大がかりなソナー探索が何度も行われ、「謎の物体」の水中写真が撮影されています。
海の怪物に関する昔話
むかしむかし、徳蔵(とくぞう)という船のりがいました。 船のりの名人として知られ、徳蔵のあやつる船は、どんな嵐ものりきり、これまで一度として遭難(そうなん)したことはありません。 だから船主たちは、だいじな荷物を運ぶとき、かならず徳蔵の船を選ぶほどです。 しかし、そんな徳蔵にも肝(きも)をひやすような出来事がありました。 ある日、徳蔵は荷物をおろしたあと、のんびりと船をこいでいました。 空は晴れ、おだやかな波の上で海鳥たちがたわむれています。「なんて静かな海だ」 すっかりいい気分になった徳蔵は、歌を口ずさんでいました。 はるかむこうに、島影が見えたときです。 ふいに、なまあたたかい風が吹いてきて、波が高くなりました。 沖の方をふり返ると、さっきまで晴れていた空に黒い雲がわきだし、みるみる広がっていきます。「おかしいなあ?」 徳蔵は首をかしげました。 これまで長年の経験で、こんな日は、絶対に嵐などやってきません。 それでも、あたりは暗くなり、船の上まで黒雲がたれてきました。 波はいよいよ高くなり、船が大きくゆれます。 やがて雨が降りはじめると、はげしい嵐になりました。(こういうときは波にさからわず、じっとしていることだ) 徳蔵は船をこぐのをやめると、ろ(→船をこぐための棒)を船に引きあげたまま、船のバランスをとるために、船底にうずくまっていました。 船はまるで、木の葉のようにゆれます。と、そのとき、目の前の海から黒いものが浮きあがり、あっというまに高さ一丈(約三メートル)ほどの大入道になりました。「ば、化けもの!」 さすがの徳蔵もビックリです。 けれど、腕ききの船のりだけのことはあり、あわてずにその化けものをにらみつけました。 化けものの両眼が、ランランと光っています。 そして、うなるような声でいいました。I「どうじゃ、わしの姿は恐ろしかろう!」 すると徳蔵も、負けじといい返します。「なにが恐ろしいもんか。世の中には、おまえより恐ろしいものはいくらでもいる。とっとと消えうせないと、このろでたたき殺すぞ!」 徳蔵のすごいけんまくに、ぎゃくに化けものがあわてました。「チビのくせに、おそろしい男だ」 化けものはそのままスーッと海へ沈むと、それっきり姿を見せなくなりました。と、同時に嵐がやみ、ふたたび空に日がもどります。 家にもどって、このことを近所のもの知り老人に話したら、それは海坊主という妖怪(ようかい)で、からだがうるしのように黒く、嵐をおこして船を沈めるというのです。(なるほど、それにしても、よく船を沈められずにすんだものよ) この話しはすぐに広まり、海坊主をおいはらった船のりとして、徳蔵への仕事の依頼(いらい)は、ますますふえたということです。
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