「さん(3)ご(5)」の語呂合わせから、世界自然保護基金(WWF)が1996(平成8)年に制定しました。 同基金は、この年から石垣島・白保に珊瑚礁保護研究センターを建設する運動を開始し、2000(平成12)年4月に「しらほサンゴ村」をオープン。 海の大切さを広く知らせる活動に取り組んでいます。
海に関する昔話
むかしむかし、ある村に、心のやさしい浦島太郎(うらしまたろう)という若者がいました。 浦島(うらしま)さんが海辺を通りかかると、子どもたちが大きなカメをつかまえていました。 そばによって見てみると、子どもたちがみんなでカメをいじめています。「おやおや、かわいそうに、はなしておやりよ」「いやだよ。おらたちが、やっとつかまえたんだもの。どうしようと、おらたちの勝手だろ」 見るとカメは涙をハラハラとこぼしながら、浦島さんを見つめています。 浦島さんはお金を取り出すと、子どもたちに差し出して言いました。「それでは、このお金をあげるから、おじさんにカメを売っておくれ」「うん、それならいいよ」 浦島さんは、子どもたちからカメを受け取ると、「大丈夫かい? もう、つかまるんじゃないよ」と、カメをそっと、海の中へ逃がしてやりました。 さて、それから二、三日たったある日、浦島さんが海に出かけて魚をつっていると、「・・・浦島さん、・・・浦島さん」と、だれかが呼ぶ声がします。「おや? だれが呼んでいるのだろう?」「わたしですよ」 すると海の上に、ひょっこりとカメが頭を出して言いました。「このあいだは、ありがとうございました」「ああ、あのときのカメさんかい」「はい、おかげで命が助かりました。ところで浦島さんは、竜宮(りゅうぐう)へ行ったことがありますか?」「竜宮? さあ? 竜宮って、どこにあるんだい?」「海の底です」「えっ? 海の底へなんか、行けるのかい?」「はい。わたしがお連れしましょう。さあ、背中へ乗ってください」 カメは浦島さんを背中に乗せて、海の中をずんずんともぐっていきました。 海の中には、まっ青な光が差し込み、コンブがユラユラとゆれ、赤やピンクのサンゴの林がどこまでも続いています。「わあ、きれいだな」 浦島さんがウットリしていると、やがて立派なご殿(てん)へ着きました。「着きましたよ。このご殿が竜宮です。さあ、こちらへ」 カメに案内されるまま進んでいくと、この竜宮の主人の美しい乙姫(おとひめ)さまが、色とりどりの魚たちと一緒に浦島さんを出迎えてくれました。「ようこそ、浦島さん。わたしは、この竜宮の主人の乙姫です。このあいだはカメを助けてくださって、ありがとうございます。お礼に、竜宮をご案内します。どうぞ、ゆっくりしていってくださいね」 浦島さんは、竜宮の広間ヘ案内されました。 浦島さんが用意された席に座ると、魚たちが次から次へと、ごちそうを運んできます。 ふんわりと気持ちのよい音楽が流れて、タイやヒラメやクラゲたちの、それは見事な踊りが続きます。 ここはまるで、天国のようです。 そして、「もう一日いてください。もう一日いてください」と、乙姫さまにいわれるまま竜宮ですごすうちに、三年の月日がたってしまいました。 ある時、浦島さんは、はっと思い出しました。(家族や友だちは、どうしているだろう?) そこで浦島さんは、乙姫さまに言いました。「乙姫さま、いままでありがとうございます。ですが、もうそろそろ家へ帰らせていただきます」「帰られるのですか? よろしければ、このままここで暮しては」「いいえ、わたしの帰りを待つ者もおりますので」 すると乙姫さまは、さびしそうに言いました。「・・・そうですか。それはおなごりおしいです。では、おみやげに玉手箱(たまてばこ)を差し上げましょう」「玉手箱?」「はい。この中には、浦島さんが竜宮で過ごされた『時』が入っております。これを開けずに持っている限り、浦島さんは年を取りません。ずーっと、今の若い姿のままでいられます。ですが開けてしまうと、今までの『時』がもどってしまいますので、決して開けてはなりませんよ」「はい、わかりました。ありがとうございます」 乙姫さまと別れた浦島さんは、またカメに送られて地上へ帰りました。 地上にもどった浦島さんは、まわりを見回してびっくり。「おや? わずか三年で、ずいぶんと様子がかわったな」 たしかにここは、浦島さんがつりをしていた場所なのですが、なんだか様子がちがいます。 浦島さんの家は、どこにも見あたりませんし、出会う人も知らない人ばかりです。「わたしの家は、どうなったのだろう? みんなはどこかへ、引っ越したのだろうか? ・・・あの、すみません。浦島の家を知りませんか?」 浦島さんが一人の老人にたずねてみると、老人は少し首をかしげて言いました。「浦島? ・・・ああ、たしか浦島という人なら、七百年ほど前に海へ出たきりで、帰らないそうですよ」「えっ!?」 老人の話しを聞いて、浦島さんはびっくり。 竜宮の三年は、この世の七百年にあたるのでしょうか?「家族も友だちも、みんな死んでしまったのか・・・」 がっくりと肩を落とした浦島さんは、ふと、持っていた玉手箱を見つめました。「そういえば、乙姫さまは言っていたな。この玉手箱を開けると、『時』がもどってしまうと。・・・もしかしてこれを開けると、自分が暮らしていた時に戻るのでは」 そう思った浦島さんは、開けてはいけないと言われていた玉手箱を開けてしまいました。 モクモクモク・・・。 すると中から、まっ白のけむりが出てきました。「おおっ、これは」 けむりの中に、竜宮や美しい乙姫さまの姿がうつりました。 そして楽しかった竜宮での三年が、次から次へとうつし出されます。「ああ、わたしは、竜宮へ戻ってきたんだ」 浦島さんは喜びました。 でも、玉手箱から出てきたけむりは次第に薄れていき、その場に残ったのは、髪の毛もひげもまっ白の、ヨポヨポのおじいさんになった浦島さんだったのです。
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