1889(明治22)年、イタリアで大流行していたピザを当時の王女マルゲリータが所望しました。 そのときピザは、白(モッツアレラチーズ)・緑(バジル)・赤(トマトソース)でイタリア国旗をデザインにしていました。 11月20日は王女マルゲリータの誕生日にあたり、凸版印刷が1995(平成7)年に制定しました。
イタリアに関する昔話
むかし、むかし、イタリアのアトリという町のお話です。 ある日、王様の命令で、町の広場の塔に、大きな鐘がつるされました。 鐘からは、長いつなが下がっています。「どんな音がするのだろう?」 町の人たちは、塔をとりかこんで、むねをわくわくさせながら、王様がくるのを待ちました。 やがて、王様は馬車でおつきになると、集まった人びとに、こういいました。「この鐘は、ただ時刻を知らせたり、音を聞くだけのものではない。『正しさの鐘』として、ここにつるしたのじゃ」「正しさの鐘?」 人びとは、ふしぎそうに王様を見つめました。「そうじゃ『正しさの鐘』じゃ。おまえたちのうちのだれでも、もし、人にいじめられたり、つらいめにあわされたりしたら、ここへきて、鐘をならせばよい。鐘がなれば、裁判官すぐにきて、おまえたちのいい分を聞いてくれる。そして、何が正しいかを、きめてくれるであろう」「だれが鐘をならしても、よろしいのですか?」「だれがならしてもよい。子どもでもよいぞ。見よ。そのために、つなはこのように長くしてあるのじゃ」 こうして、アトリの町では、その日から、人につらいめにあわされたものや、あらそいごとのある人は、塔の下にきて、鐘をならすようになりました。 そして、王様のおっしゃったとおり、鐘がなると裁判官がやってきて、だれが正しいか、何が真実かをきめてくれるのです。 鐘のおかげで、町のみんなは、楽しく毎日をすごせるようになりました。 長い年月のあいだに、大ぜいの人がつなをひっぱったので、つながきれて、新しいつなができるまで、ぶどうのつるがさげられることになりました。 さて、アトリの町はずれに、一人の金持ちの男の人が住んでいました。 この人は、若いころは馬にのって悪者をたくさんやっつけた、いさましく、正しい人でした。 でも、年を取るにしたがって、だんだんといじわるのけちん坊になってしまったのです。 ある日、金持ちは考えました。「もっとお金を貯める方法はないだろうか。そうだ。馬にエサをやらなければいいんだ」 こうして、むかし、いっしょにかつやくした馬なのに、エサをやるのをやめてしまいました。 やせほそった馬は、ヨロヨロしながら、やっとアトリの町へたどりつきました。 そして、広場の塔の下まで来ると、つなのかわりに下がっていたぶどうのつるの葉を、むしゃむしゃ食べ始めました。ガラン、ガラン。 馬が食べるたびに、鐘が、ガラン、ガランとなりました。 町の人たちも裁判官も広場に飛んできて、その馬を見ました。「かわいそうに、こんなにやせている」「馬は口がきけないから、鐘を鳴らして、辛いことをうったえているのだ」 すぐに飼い主だった金持ちが、広場に呼ばれました。 裁判官は金持ちにいいました。「この馬は、今までとてもあなたの役に立ってきたはず。あなたのためたお金の半分は、この馬の物ではありませんか?」 金持ちの男の人は、ブドウの葉を食べている馬を見ているうちに、胸がいっぱいになりました。 自分がどんなにひどいことをしたか、ようやくわかったのです。 そしてそれからは、馬を大切にして、いつまでも仲良く暮らしました。 アトリの鐘は、うまにとっても『正しさの鐘』だったのです。
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