「11(いい)10(ト)イレ」ということで、日本トイレ協会が1986(昭和61)年に制定しました。 同協会はこの日に「トイレシンポジウム」を開催し、公衆トイレを対象とした「グッドトイレ10賞」や「トイレレポートコンクール」の表彰などを行っています。
トイレ関する昔話
むかし、むかし、上野は、しのばずの池の弁天(べんてん)さまが、ひさしぶりのお開帳(かいちょう→ふだんは見せない物を公開すること)ということになりました。 さあ、ゆうめいな弁天さまのこと。 お堂のある小さな島は、朝早くから日のくれまで、たいへんなにぎわい。 あめ屋に、だんご屋、おもちゃ屋など、小さな出店の客をよぶ声に、チンチンチンと器用に子どもの名前をほりあげる、まい子の札売りまで、そして、ひときわさわがしいのは、四六のガマの油売りに、古着屋のたたき売りに、松井源水(まついげんすい→有名な、こま回し師)のこま回し。 出店から少しはなれたところには、茶屋も、ずらりとならんでいます。 ところが、この島は弁天さまの島ですので、やたらに小便ができません。 これがまことに不便(ふべん)で、とりわけ女の人は、こまりはててしもうた。 これを見て、頭のいい男が、茶店のうらをかりて、貸し便所をつくった。 ひとりがつかうたんびに、五文(百五十円ほど)ずつとるので、たいへんなもうけです。 太郎作(たろうさく)は、客のたえない便所を見て、「なるほど。こいつあ、うまい思いつきだ」 すっかり感心して、「よし。おれも便所をつくって、ひともうけしよう」と、さっそく家に帰って、女房にそうだんすると、「一けんできたあとだもの。いまさらたてたところで、はやりっこないよ」と、はんたいします。「なあに、そんなことがあるもんか」と、太郎作は、女房をむりやりときふせて、いまある便所のすぐとなりに、新しいやつをたてました。 ところが、太郎作の便所は、たてたそのときから、大はんじょう。 お客がずらりとならんで、じゅんばんを待たねばならないというありさま。 それにくらべて、はじめからあるとなりの便所ヘは、入るものがひとりもいません。 夕方になると、太郎作夫婦は、おもい銭箱(ぜにばこ)をかついで、家に帰ってきた。「どうだい、女房。やっぱり、おれのいったとおりだろう」と、太郎作は、鼻たかだかです。 女房は、いかにもふしぎそうに、「それにしても、どうしてまあ、うちのほうばっかりに、人がくるんでしょうねえ?」と、たずねれば、太郎作は、すました顔で、「じつはな。ちっと、頭をつかった」「あれ、おまえさんがかい?」「そんなに、ふしぎがることはない。なに、となりの便所には、おれが一日中、入っていたんだ」
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