1871(明治4)年、東京九段の招魂社(靖国神社)で、フランスの「スリエサーカス」が日本で初めて洋風のサーカスを興行したのがこの日です。 本格的なサーカスが来日したのは1886(明治19)年のチャリネ曲馬団でした。
見世物に関する昔話
両国の広小路で、クマの見せ物をやっている、じいさんがおりました。 見せ物には、なによりお天気が第一です。 それが、このところ、ずっとお天気続き。 おかげで、まい日、大入り満員。 じいさんは、すっかりよろこんで、自分も出入り口にあらわれて、「さあ、クマだ、クマだ。日本一の大グマだ。江戸では、初めてのおめみえ。そーれ、よってらっしゃい、見てらっしゃい」 大声をはりあげて、お客をよんでいました。 ところが、このじいさん、とつぜんの病気で床につくと、きゅうに容態がかわって、もはや、息をひきとるばかりとなりました。 それなのに、大声をあげて、「クマだ、クマだ。日本一の大グマだー!」と、どなってばかり。 念仏などは、ひとこともとなえません。 ああ、こんなことでは、後生(ごしょう→死んでから生まれ変わること)が悪かろうと、ばあさんは、とんとこまりはて、「さあ、おまえさん。もうすぐ、おむかえがくるんだよ、なむあみだぶつの一つぐらいは、となえるものじゃ」 いくらばあさんが、いってきかせても、じいさんは念仏どころか、「クマだ、クマだ」と、わめくばかり。 まくらもとに集まった、身うちの者も、口ぐちに念仏をすすめますが、じいさんは、「クマだ、クマだ」 の一点ばりで、どうすることもできません。 このようすを見た医者が、「どれ、わたしが、念仏をいわせてみせましょう」と、じいさんの耳に口をよせて、「じいさん、明日は大雨だぞ」と、いうと、じいさん、きゅうにしゅーんとなって、「ああ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
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