1608(慶長13)年のこの日、オランダの眼鏡職人ハンス・リッペルスハイが遠くのものが近くに見える眼鏡、つまり望遠鏡を発明しました。 特許をオランダの国会に提出しましたが、原理が単純すぎたため、申請は却下されたといいます。
望遠鏡に関する昔話
昔、ある村に彦一(ひこいち)という男が住んでいました。 小さい頃から頭が良くて、ずいぶんととんちがきくのですが、ひどいなまけ者で、そのうえお酒が大好きでしたから、いつも貧乏でした。 彦一の夢は、毎日、たらふく酒を飲むことです。「なにかうまい知恵は、ないもんじゃろうか?」 考えているうちに、ふと、てんぐの隠れみの(それをかぶると、姿が消える、てんぐの宝物)のことを思い出しました。 てんぐは、村はずれの丘に、ときどきやってくるといいます。 彦一は、ごはんを炊くときにつかう、火吹き竹を持って丘にくると、「やあ、こいつはええ眺めじゃ。大阪や京都が手にとるように見える。見えるぞ」 そういいながら、火吹き竹を、望遠鏡のようにのぞいていると、まつの木のそばから声がしました。「彦一どん、彦一どん。のぞいているのは、かまどの下の火を吹きおこす、ただの火吹き竹じゃろうが」 声はしますが、目には見えません。 てんぐが近くにいるのです。「火吹き竹に似た、干里鏡(せんりきょう)じゃ。おお、京の都の美しい姫がやってきなさったぞ。牛に引かせた車に乗っておるわ」「京の都の姫だと。彦一どん、ちょっとでよいから、わしにものぞかせてくれんか」 てんぐは彦一のそばにきたようすです。「だめだめ。この千里鏡は、うちの宝物。持って逃げられては大変じゃ」 そのとたん、目の前に大きなてんぐが姿を現しました。「大丈夫、逃げたりはせん。だけど、そんなに心配なら、そのあいだ、わしの隠れみのをあずけとこう」「うーん、それじゃ、ちょっとだけだぞ」 彦一はすばやく隠れみのを身につけると、さっさと逃げ出しました。 てんぐは、火吹き竹を目にあててみましたが、中はまっ暗で、なにもうつりません。 だまされた、と、気がついたときは、彦一の姿は、影も形もありませんでした。 隠れみのに身を包んだ彦一は、さっそく居酒屋(いざかや→お酒をだす料理屋)にやってくると、お客の横に腰をかけ、徳利(とっくり→お酒の入れ物)のまま、グビグビと飲みました。 それを見たお客は、目を白黒させました。「とっ、徳利が、ひとりでに浮き上がったぞ!」 たらふく飲んだ彦一は、ふらつく足で、家に逃げて帰りました。「これは、べんりな物を手に入れたわ」 隠れみのさえあれば、いつでも、どこでも、好きな酒を飲むことができます。 つぎの朝。 きょうも、ただ酒を飲みにいこうと、とび起きた彦一は、大事にしまいこんだ隠れみのが、ないことに気がつきました。「おっかさんよ。つづら(衣服を入れるかご)の中にしまいこんだ、みのを知らんか?」「ああーっ、あのきたないみのなら、けさがた、かまどで燃やしたわ」「な、なんやと!」 のぞきこんでみると、みのはすっかり燃えつきています。 彦一はぶつくさいいながら、灰をかき集めて、からだにぬりました。 どうやら、隠れみのの効果は、灰になってもあるらしく、灰をぬったところが、透明になりました。 町では、昼間から酒を飲ませている店がありました。 彦一は、さっそくお客のそばにすわると、徳利の酒を横取りしました。 それを見たお客は、「わっ」と、悲鳴をあげました。「みっ、見ろ。めっ、目玉が、わしの酒を飲んでる!」 隠れみのの灰は、目玉にだけぬってなかったのです。「ばけものめ、これをくらえ!」 お客は、そばにあった水を彦一にかけました。 するとどうでしょう。 からだにぬった灰がみるみる落ちて、はだかの彦一が姿を現しました。「あっ! てめえは、彦一だな! こいつめ、ぶん殴ってやる!」「わっ、悪かった、許してくれー!」 彦一はそういって、すっぱだかのまま逃げ帰ったそうです。
「10月2日 望遠鏡の日」へのトラックバックURL(0)
http://www.kyoto-chintai.com/mt/tb-mt.cgi/319
京都賃貸ショップ ルームズ